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ある社長と話をする機会があって、「経営者保証を外したい」といいます。ところが「最近は経営者保証を外せる場合があります」と政府は広報しています。また、日本政策金融公庫国民生活事業では経営者保証を求めないことを原則としています。政府広報が言っているのは「経営者保証ガイドラインに基づく体制を構築する場合」は経営者保証を外すことが出来るという言葉と同じ意味を持ちます。そこで経営者保証ガイドラインに基づいて経営者保証を考えていくことにしますが、その前に経営者保証とは何かを検討します。
経営者保証とは中小企業についてみられる現象で、金融機関が融資実行をする際に、経営者に対して個人連帯保証を要求することです。ここの説明を行ってあまりおかしいと思うことはないというのが普通の感覚ではないでしょうか。しかし、世の会社の大多数を占める株式会社は有限責任社員で構成される、言い換えるならば「出資者は自身の株式引受額の範囲内で責任を持つ」のです。そもそも株式会社や合同会社は有限責任会社であるため、「出資者は投資額の範囲で責任を負う」、すなわち、投資額を超えて返済を求められることはないのです。ここまでが会社法の原則に従った説明になります。
ところがほとんどの場合において「創業者は最大の出資者」となりますが、経営者保証は株式会社や合同会社を作った創業者や経営者に無限責任を求める装置です。つまり、ほとんどの創業者は出資者としては有限責任であるはずなのに、経営者としては無限責任を負わせることになります。経営者保証は、自己の資産を担保提供することで実現します。言い換えるならば、物的担保としては(根)抵当権の設定、人的担保としては連帯保証人を求めることになり、このことが最悪の事態に陥ったときに「身ぐるみはがされる」ことになりますから、担保権実行を回避するための様々な行動を行います。
実はこの経営者保証が経営者の世代交代にブレーキを掛ける、市場から退出するべき「ゾンビ企業」を生きながらえる結果となることもあります。経営者は無限責任で自社に対する個人保証を行っているので、退場することがそもそも困難となるということです。当然、創業経営者は自ら積極的に会社に対する個人連帯保証をするわけではないはずです。しかしこの担保提供を行わないと借入を起こすことが出来ないので、やむを得ず経営者保証に応じていることになります。この為、経営者保証が好きな経営者はいないと思います。また、隙があれば経営者保証を外すことを求めます。
更に、経営者保証を求めることは担保権の範囲内で貸付を行うことを意味しますので、金融機関側に「担保至上主義、特に土地神話」で行動するように求めることになると考えてよいでしょう。この担保主義がもたらしたのは、金融機関に担保価値を算出してその範囲内で貸し出すとする姿勢を身に着けさせたことではないでしょうか。従って、担保評価ではなく事業を評価する事業性融資を行うことは上手ではないことを示唆します。
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