2016年に中小企業庁から公表された「事業承継ガイドライン」によれば、1994年から2014年の20年間で中小企業の社長の平均年齢が20歳上昇し、更に後継予定者のいる企業といない企業を比較すると後継者のいない企業の方が企業業績は悪いとする統計結果を発表しました。これらのことから中小企業の健全な発展が我が国経済の発展に必要と考えた国は、平成30年4月から10か年間を「事業承継推進強化年間」として、様々な施策を講じております。ここでは、平成30年度税制改正により大幅に改正された事業承継税制について紹介します。
事業承継税制(特例措置)の概要
- 贈与税の納税猶予:一定の条件を満たす後継者が円滑化法の認定を受けている株式を贈与により取得した場合に贈与税を100%猶予又は免除するというもの。
- 相続税の納税猶予:一定の条件を満たす後継者が円滑化法の認定を受けている株式を相続や遺贈により取得した場合に相続税を100%猶予又はするというものです。
ここで言う一定の条件は下記の通りです。
- 平成30年4月1日から平成35年3月31日までの特例承継計画を都道府県知事に認可を受けること
- 適用期限は 平成30年1月1日から平成39年12月31日までであること
- 対象株式は全株式であること
- 納税猶予割合は100%であること
- 承継パターンは代表者を含む先代から最大3名の後継者を対象とすること
- 雇用確保要件を従来から緩和したこと
- 事業の継続が困難となる重大な事由が生じている場合に納税の免除があること
- 相続時精算課税の適用が60歳以上のものから20歳以上のものへの贈与に拡張されている事
この情報だけで直ちに本税制を利用するとする決断を下すのは急ぎすぎだとは思いますが、せっかく事業承継について考える税制を用意していただきましたので利用する可否の検討をする必要はあろうかと考えます。事業承継税制は、事業承継を促すことを目的とするものであって、事業承継によって税収の増大を図ることも目的としたものではありませんから、事業承継を考えようとするきっかけにはなり得るのものではないかと考えております。